温熱環境特性と省エネルギー性能について

次世代省エネ基準に対して約4割も断熱性能が向上

図4は、2001年と2002年の冬期において、一日平均の室内外温度差と暖房用電力消費量によって住宅の断熱性能(熱損失係数Q値)を評価したものである。室内外温度差を1℃変化させるための電力消費量は、一次回帰曲線の傾きに相当し、2001年が4.75kWh/日、2002年が4.32kWh/日となる。これを実質延床面積あたりと時間単位に変換した0.98W/m2Kと0.89W/m2Kが熱損失係数Q値の評価値となり、次世代省エネルギー基準T地域の基準値1.60W/m2Kに対して39〜44%も向上している。

優れた室内熱環境と高い省エネルギー性を確認

室内温熱環境に関する最新の研究成果*1を基に本住宅の暖房時における室内温熱環境に関して、下表に示すとおり、4項目の指標について5段階のグレード評価を行った。1階、2階ともグレードの平均値は4.9(最高評点は5.0)を示し、室内温熱環境としてはともに最高ランクの性能を有している。

消費された暖房エネルギーにより、どの程度の温熱環境が形成されたかについて、同様に、最新の研究成果*1を尺度とした評価結果を図5に示す。室内温熱環境のグレードが最も高い水準にありながらも、エネルギー消費は低く抑えられており、快適性と省エネルギー性を兼ね備えた優れた性能をもっていることが確認できる。

(注) グラフにある他物件データは、(社)日本建築学会が発刊した「住宅の環境設計データブック」にて環境に配慮した住宅の実例として紹介された物件である。
*1: 長谷川兼一他「環境に配慮して設計された住宅の温熱環境性能とエネルギー消費量」日本建築学会技術報告集(2001年12 月)
*2: 床上1.1mと5cmとの温度差を、床上1.1m付近の温度が20℃、外気温が0℃の時に換算した値。
*3: 外気温が0℃の時に換算した値。
*4: 団らん時(18〜22時と想定)に居間の床上1.1m付近の温度が20℃、外気温が0℃に換算した値。
*5: 暖房度日。1日の平均外気温が18℃以下となる日について、室温18℃と平均外気温との差を1暖房シーズンで合計した値。
本報告内容は、以下の二つの学術論文を再編集したものです。
◎村橋喜満、鈴木憲三他:「薄板軽量形鋼に外張断熱を施し高断熱高気密住宅の室内および壁体内温熱環境とエネルギー消費特性」、日本建築学会環境系論文集第579号、P.1〜P.8、2004年5月
◎村橋喜満、鈴木憲三他:「薄板軽量形鋼造に外張断熱を施した高断熱高気密住宅の室内温熱環境とエネルギー消費特性 その2 温暖地域における評価とさらなる省エネルギー化に向けた課題」、日本建築学会環境系論文集第596号、P.7〜P.14、2005年10月

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